DSM(DiskStation Manager)7.2ベータ版が2023年3月にリリースされました。
Virtual DSMの仮想化DSM環境に7.2ベータ版を適用して、内容を確認してみました。
DSM 7.2の新機能の内容については以下のベータ版公式サイトに詳細が記載されています。
改ざん防止や暗号化など、セキュリティを大幅に強化したのが売りのようです。また、M.2ストレージボリュームのサポート強化や、バックアップ機能の高速化も図られているようです。その他、コンテナ管理パッケージがDockerからContainer Managerに名称が変更されており、インターフェイスも大幅に変わっている模様です。
内容の確認のため、ベータ版リリースを実際にインストールして確認してみました。なお、ベータ版であるため、流石に実運用しているサーバにはインストールできないので、Vitrual Machine Manager上で稼働しているVitrual DSMを7.2ベータ版にアップデートすることとしました。
前提 本記事でのDSM(OS)バージョンは、Synology DSM 7.1 & DSM 7.2 Betaを用いています。
1.アップデートパッケージのダウンロード
Synologyのダウンロードセンターから、OSアップデート用のパッケージをダウンロードします。
本記事では「VitrualDSM用のパッケージ」のダウンロードとなります。
2.DSM7.2ベータへのアップデート
DSMコンソールより、コントロールパネルの[更新と復元]を選択し、[DSMの更新]画面で[DSMの手動更新]ボタンをクリックします。
ダウンロードしたパッケージを[参照]釦で選択したら、[OK]をクリックします。
更新にあたりの重要な変更点が表示されますので、よく読んで理解してから、「システムのアップデートを理解し同意します。」にチェックを入れ、[更新]をクリックします。
なお、変更点としては以下の内容が記載されています。
Advanced Media Extensions (AME) は自動的にバージョン3.1.0 にアップデート します。
マルチメディアパッケージが通常どおり機能するよう、以下のタスクを完了 してからアップデートしてください。
DSM > [コントロールパネル]の順に進んで、 Synology アカウントにサインイン してください。VirtualDSM がインターネットに接続されているか確認する。
注:このバージョン以降、AMEは Advanced Audio Coding (AAC) 変換をサポート しません。 利用可能な機能および AAC ファイルに対する再生能力は、エンドデバイ スのサポートに依存します。
DSM
・セキュリティ上の理由で QuickConnect の 「自動的にポート転送ルールを作成」の機能は アップデート後に削除されます。 当社は、 QuickConnect リレーサービスを [コントロー ルパネル] > [外部アクセス] > [QuickConnect] > [詳細設定]で有効化して、DSM にアクセスできるか確認することを推奨します。
Synology パッケージ
・次のパッケージは自動的に更新されるか、あるいはDSM のアップデート後に互換性をも バージョンへ手動でアップデートすることが必要になります。 アップデート後にパッケ ージセンターでパッケージステータスをチェックしてください。
Node.js v18, Docker, Synology Application Service, Replication Service, Hyper Backup, MariaDB 10, Web Station, PHP 8.0, Video Station, Text Editor, Audio Station, Apache HTTP Server 2.4, phpMyAdmin, PHP 7.4, Antivirus Essential,Advanced Media Extensions, Synology Photos, Snapshot Replication
インストールには10から20分時間が掛かるとの注意喚起ダイアログが出ますので、時間に余裕があることを確認してから[はい]をクリックします。
DSMのアップロード中画面が表示されます。100%になったらアップロード完了です。
DSM再起動中のカウントダウンが実行されます。
カウントダウンが完了した後、NASにインストールされている各種アプリケーションのパッケージの更新が実行されます。
DSM更新完了後に、DSMコンソールにログインすると、パッケージセンターより、いくつかのパッケージの修復と更新が通知されています。
DSMのアップデート時のパッケージ更新時に自動で実行されないものがあり、別途手動でパッケージの更新や修復を行う必要があります。
Node.js.v12はDSM7.2ではサポート対象外となるため、アンインストールを促されます。
パッケージセンターでは、ほとんどのパッケージがベータ版となっています。
3.主な変更項目
3-1.WriteOnce共有フォルダ
Synology DSM 7.2で実装されたWriteOnce機能は、データの書き込みが一度だけ許可される機能です。この機能を使用すると、データの改ざんや削除を防止することができます。
WriteOnce機能を有効にすると、指定されたフォルダーに書き込まれたファイルは、その後変更や削除ができなくなります。つまり、一度書き込まれたデータは、以降の操作で変更や削除することができません。
WriteOnce機能の利点は、データの改ざんや削除を防止し、データの完全性を確保することができる点です。この機能を使用することで、重要なデータや機密情報を安全に保管することができます。また、WriteOnce機能は法的要件や規制要件を満たすために使用することもできます。
ただし、一度書き込まれたデータを変更することができないため、誤った情報が書き込まれた場合には修正ができなくなるという欠点もあります。また、WriteOnce機能を使用する場合には、ファイルの保管期間やアクセス権限の管理など、適切な管理が必要です。
WriteOnce機能では、「企業モード」と「コンプライアンスモード」を選択できます。前者は管理者ユーザが共有フォルダの削除をすることが可能であり、後者は誰も共有フォルダの削除をすることが出来なくなります。
詳細設定でチェックサムの有効化やファイル圧縮の有効化、共有フォルダの割当量を設定できます。チェックサムについては、仮想マシンのホストやSurvellanceStationの記録を行う場合は有効化しないようにとの注意があることから、機能を有効化した場合はかなりの高負荷であることが予想されます。
アクセスするユーザ権限設定を行えば、WriteOnce共有フォルダの作成は完了となります。
WriteOnce共有フォルダについては、共有フォルダ一覧で、WriteOnceという表示がされていることで判別できるようになっています。
3-2.Web Station
Web StationはDockerアプリケーションとの連携が強化されたようです。
Web Stationでは、メニュー体系が変更されており、DSM7.1までの「Webサービスポータル」というメニュー項目が「Webポータル」と「Webサービス」に分かれ、設定項目も大幅に変更されているようです。「Webサービス作成」の画面にて、「Docker化されたスクリプト言語のウェブサイト」という選択項目が追加となっています。
3-3. Container Manager
「Docker」パッケージが「Container Manager」パッケージと名称変更されており、インターフェースも一新されています。
Dockerのアイコン
Container Managerのアイコン
「Docker」については以下の記事で紹介しています。
Container Managerの新機能としては、Docker Composeによる複数Dockerコンテナを管理するための機能が追加されています。
なお、DSM7.2のバージョンアップ時に、DockerがContainer Managerに自動的に更新されますが、バージョンアップ前にDockerで稼働していたコンテナはバージョンアップ後もそのままの状態で使用可能でした。
3-4.QuickConnectのポート転送規則の自動作成の削除
ルーターがUPnP機能を持っていれば、QuickConnectで接続する際のポート転送規則の自動作成を行う機能がこれまでは実装されていましたが、DSM7.2からは当該機能が削除されています。
よって、これまでと同じようにQuickConnectでポート転送を行いたければ、自動ではなく手動で設定をしてやる必要があります。
これまで意識せずにQuickConnectのポート転送自動設定を行っていた場合、DSM7.2にアップデート後にルーターからポート転送規則が削除されてしまうので、そのままだとQuickConnectでの外部接続の性能がダウンしてしまう可能性があります。
4.まとめ
Synology DSM 7.2ベータ版について紹介しました。
個人ユーザ向けの新規機能はあまりなく、どちらかといえばセキュリティ向上が中心のアップデートといった内容です。
- WebステーションやContainer Manager(Docker)についてはメニュー体系や機能が変更となっているため、当該機能を使用しているのであれば事前に内容を十分確認しておく必要があるかと思います。
- WriteOnce機能については、複数人でコラボレーションするような用途の場合、誤って改変・削除されては困るようなドキュメント・データを格納しておくような用途には使用できるように思います。
- QuickConnectで接続する際のポート転送規則の自動設定が削除されていますので、QuickConnectを使用している場合はUPnP機能によるポート転送について検討し、設定をする・しないを決定する必要があるかと思います。
以上、最後まで記事を読んでいただき、ありがとうございました。